恩田陸さん、3回目の登場です。単に好きなんですよね。曖昧なまま話が終わることも多い作家さんだと思いますが、そこも含めて。読まれた方やご存知の方も多いかと思いますが、直木賞と本屋大賞をダブル受賞した作品となります。
近年その覇者が音楽界の寵児となる芳ヶ江国際ピアノコンクール。自宅に楽器を持たない少年・風間塵16歳。かつて天才少女としてデビューしながら突然の母の死以来、弾けなくなった栄伝亜夜20歳。楽器店勤務のサラリーマン・高島明石28歳。完璧な技術と音楽性の優勝候補マサル19歳。天才たちによる、競争という名の自らとの闘い。その火蓋が切られた。
2次予選での課題曲「春と修羅」。この現代曲をどう弾くかが3次予選に進めるか否かの分かれ道だった。マサルの演奏は素晴らしかった。が、明石は自分の「春と修羅」に自信を持ち、勝算を感じていた……。12人が残る3次(リサイタル形式)、6人しか選ばれない本選(オーケストラとの協奏曲)に勝ち進むのは誰か。そして優勝を手にするのは――。
音楽を文字で表現していることにまず驚かされます。文字で表すという都合上、比喩的な表現が多くなってしまうとは思いますが、ものすごく冗長な表現があるというわけでもなく、自分が知らない曲について描かれていても何となく情景が浮かんでくるのは筆力によるものではないでしょうか。
本当なら、Youtubeで曲が出てくるごとに検索をかけて聞きながら読み進めていけたらよかったのでしょうが、読むのが早くない僕がそれをしていたらいつまでたっても読み終わらなくなりますし、先が気になるために読み進めていきました。
僕は結構ハマった方ですが、長い話で(Kindleで読んでいたためあまり感じませんでしたが、書店で見るとものすごく分厚かったです)、ひたすらコンクールの様子が描かれていますので、途中で脱落した方もいるのというのはわかります。ガラスの仮面の音楽版のような感じというレビューを見ましたが、まさにそんな感じだと思います。…というか、この作品を紹介するのってとっても難しいんだなと書いていて思いました。ですので、詳しいことは書けません。。
こういう、登場人物たちが競い合っている話って、読んでいるうちに誰かを応援していませんか?僕は、何となく栄伝亜夜と高島明石の二人を応援していました。最後にはコンクールの順位が出ますが、1位から3位は僕の予想通りとなっていました(…って何の自慢にもなりませんが)。普段ミステリー系のものを読んだり見たりしていても、なかなか犯人やトリックがわかることがないもので…。
そして、映画版が10月に公開されるようです。
映画化はかなり難しいのでは…と正直思ったのですが、果たして…?主人公4人に対し、それぞれの役のピアノ演奏をされる方が4人いるようです。映像化の都合上、どこかを端折っているはずですが、どのように収めたのか気になります。↑のページなどを見ると映画版では栄伝亜夜が主役扱いのようですね。小説ではどちらかというと、それぞれが主役ではあるけれども、その中でも風間塵が一番の主役のような印象でした。
クラシック音楽に詳しくない方でも、一つの小説として楽しめる作品だと思います。気になった方は是非ご一読を。